#38 パリ、そして巡礼の旅へ
2023.10.8. from Tardajos, Spain
📍旅路
昨年12月からせっかく止めずにメルマガを書き続けてきたのに、ばたばたしているうちに書き流したら一瞬で1ヶ月も止めてしまっていた。習慣は作るのは時間が掛かるのに失うと一瞬だ。曜日は月曜朝更新を目指して、また書いていこうと思います。書き逃した部分も、いつか残したい。
ライプツィヒからベルリンへ、ベルリンからパリへ、パリで10日ほど滞在、リヨン近郊の友人を訪ね、南下してル・ピュイ・エン・ヴレと呼ばれる山間の村へ。カミーノと呼ばれる、果てはエルサレムからスペイン西部のサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼の旅を、ル・ピュイの道という巡礼路を自転車で辿っています。すでに1,200km程走って、現在はスペインのブルゴスの近くの村にいます。
🚲Bon chemin, Buen camino
フランス南部の村、Le Puy-en-Verayからカミーノを始めたのが9月15日なので、巡礼を始めて20日ほどになる。ル・ピュイからコンポステーラまでは1,540kmの道のりで、現在はちょうど1,000kmを越えたあたりにいる。
カミーノは日本でもうっすら知られている印象はあるけれども、簡単に説明してみる。
カミーノの歴史は古い。カミーノ(camino)とはスペイン語でそのまま「道」の意味だけれども、早くは10世紀頃から、キリスト教徒がローマ・エルサレムに並ぶ三代聖地の一つであるサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼のために歩いた巡礼路を指す。
ヨーロッパを中心に各地から沢山の巡礼者がコンポステーラを目指して歩いてきたわけなので、当然道も無数にできる。遠くはエルサレムからもあるし、デンマークから伸びる道もある。そのうち私が選んで辿ってきたのが、フランスから伸びる主要な道の一つのル・ピュイの道、そしてフランスとスペインの国境から伸びる、現在最も多くの人が歩くフランス人の道。
「ル・ピュイの道」は、フランスのル・ピュイ・エン・ヴレから、サン・ジャン・ピエ・ド・ポー(Saint Jean Pied de Port、以下サンジャン)までの750kmを指す。サンジャンはヨーロッパ各地からの道が概ね一つにまとまる基点の街で、そこからコンポステーラまでの790kmが「フランス人の道」ということになる。フランス人の道はサンジャンを出てすぐにピレネー山脈の山越えがあり、頂上あたりでスペインへの国境を越え、スペイン北部をまっすぐ西に進んでいく。それぞれ徒歩なら1ヶ月かそれ以上掛かる道のりだ。
なので私は、メルマガを書きそびれている間に、ル・ピュイの道を終えて、ピレネーを越えてスペインに入っていた、ということになる。
道によってかなり性格は違うらしい。ル・ピュイの道はランドスケープや通り過ぎるフランスの田舎の村々がとても美しい。山や森、谷や川を抜けて、趣のある古い石造りの家が立ち並ぶ農村風景をひたすらに進んでいくうちに、遠くにピレネー山脈が次第に見えてくる、そんな道のりだった。かなりアップダウンがあるので、始める前は自転車は厳しいのではと心配していた。確かに坂は多かったけれども、いつも緑の中を進んでいくので、景色や数キロおきに現れる村の美しさに見惚れているうちに、気がつくとサンジャンに着いていた。
食も一つの楽しみだった。私は予算が限られているので各地のレストランには行けなかったけれど、代わりに昼前に村に着くと大体開かれているマルシェによく足を運んだ。新鮮な野菜やチーズ、ハムを量り売りしてもらったり、フランスらしい美味しそうな瓶詰めを買っておいて、ブーランジェリーで買ったバゲットを教会前のベンチで切って、サンドイッチにして食べていた。新鮮なトマトなんかがこれはもう絶品なのだった。
大体マルシェやベンチには私と同じような低予算(時に無予算)の人々がおのおのに何か食べていたりするので、そこで興味深い会話が出来たことも多かった。スマホも時計もキャンプ道具も何も持たず、中身の少なそうな小さなバックパックでスイスから歩いてきた人もいたし、クレジットカード1枚以外何も持たずに歩いている人が居るという話も聞いた。
フランス人の道は走り始めて1週間ほどだけれども、スペインの強い日差しに照らされた広大な大地を、一歩一歩進んでいくようなイメージだ。スペインの中でも歴史ある大きな街や村を多く抜けるのと、巡礼者がとても多いので、カミーノによる一つの文化圏が色濃く土地に反映されている印象を受ける。個人的な体感では、スペインの方が高原や平地を通るので歩きやすさはあるのかもしれないけど、道が開けている分、先を遠く感じて、途方もない道のりをゆく修行の旅、という印象を受ける。
巡礼者はクレデンシャルという巡礼者手帳を持っていて、フランスではジット、スペインではアルベルゲと呼ばれる、比較的安く泊まれる巡礼宿に宿泊できる。スペインのアルベルゲは、巡礼者も多いので40人、50人が同じ宿に居ることも少なくない。今は10月なので最多のシーズンは過ぎているはずなのだけど、十分に多い。それでも一人ひとりと話してみると、仕事を辞めた転職前のタイミングでとか、自分の人生を見つめ直したくてとか、人数の分だけ人生があって、カミーノに載せた思いがあるのだと分かる。
みちという言葉は、日本語ならwayを指す道と、unknownを指す未知との呼び方があって、魅力的な言葉だなと思う。巡礼路は絶え間なく矢印があるので、物理的には人々は道標を持って歩くことができる。身体としては明確に進む方向が示されていて、だからこそ歩く人本人はそれ以外のこと、未知なる未来、つまり道標の決まっていない自分自身のこと、とりとめのないこと、考えたいことに集中して進むことができる。わたしも一つ迷っていることがあって、自転車に乗りながらゆっくり考えている。来週にはだいぶコンポステーラが近くなるので、次のメルマガを書く頃には答えが出ているかもしれないし、出ていないかもしれない。こうやって自分自身に、自分のための時間を持たせること、それこそが私の旅のたった一つの目的なのだと、改めて思って今日も自転車を走らせています。
自転車旅の間は時間も携帯の充電もインターネットもタイトなので、写真はお休みしそうです。載せられたら載せます。
ではまた、来週に。








