#42 モロッコ、家庭料理見習い
2023.12.4. near from Marrakech, Morocco
📍旅路
引き続きエコファームにてステイしてます。
自転車旅の間にだいぶ身体が締まったはずだったのだけど、この農園に来てからモロッコ料理の習得や、あるものを使った料理の探求に忙しく、身体に丸みを感じつつあります。
🍽️Ask Adil How to Cook
朝キッチンに行って、私かアディル、早く起きた方がご飯を作る。昼も夜も大体そうだ。最近は特に食べ物をほぼ共有している。
アディルは今私が滞在している農園の雇われ陶芸家として住み込みで働く、モロッコ人の男性。彼は手先も器用だけど料理が好きで、彼の料理を見て、教えてもらったり、一緒に食べたりするのが日々の楽しみの一つ。街歩きや彼を通して知ったモロッコの料理をいくつか書き送ろうと思う。
街角で、屋台で、毛布を入れた手押し車で、商店で、どこにいてもいつも目にするのはホブズ。アラビア語でパンのことで、男性の手を広げたくらいのサイズの平たい素朴なパン。これか、もしくはイムスィンメンと呼ばれるクレープのようなものを蜂蜜やバターを合わせ、小瓶のようなサイズの小さなガラスのグラスにミントの葉っぱをわさっと入れた甘いミントティーを飲む。これがモロッコでよく見かける朝食のスタイル。
または、朝の街を歩くとスープの入った鍋とホブズを積み上げた小さな店をあちこちで見かける。スープは空豆を煮てペーストにし、スパイスとたっぷりのオリーブオイルと混ぜたビサラというもの。濃厚な豆スープにオリーブオイルの香りが際立つ美味しいスープで、地元民向けだと7DH(105円)くらいでホブズ・スープ・チャイのセットを頼むことができる。
この農園はどこからも遠いので、ホブズが無いことも多い。なので彼が朝食によく食べているのはシュヴェンという、大麦粉の大きめの粒のものを水と混ぜ、りんごとバナナ、デーツを加えて煮たもの。大麦でなくてオーツのこともある。鍋から器へ移してから、オリーブオイルと蜂蜜を回しかけて食べる。「5分で作れるし、ホブズが無い時に作って食べるもの」だそうだ。
昼に農園の仕事から休憩で戻ってくると、どこからともなく持ってきた幾つかの根菜をアディルが洗っている。すると「今日はタジンを作るんだな」と分かる。タジンはモロッコ全土で日常的によく食べられるいわゆる鍋料理で、三角錐のような蓋を持つ陶器の浅い鍋に、野菜や肉を敷き詰めてスパイスとオリーブオイルを回しかけ、蓋をして火にかける。鍋のフォルムは土鍋をイメージすると近い。
タジンはじっくり蒸し煮して野菜の水を使った無水鍋。具材はその季節にあるものを何でも入れて良いと思う。アディルはいつも最初に輪切りの玉ねぎを敷き詰め、じゃがいも、かぶ、人参、なす、きゅうり、トマト、そして漬けオリーブ、大蒜、唐辛子を1本なんかを入れる。根菜と水っぽい野菜を両方入れると美味しいし、鶏肉や牛肉、ラムを入れても良い。りんごやデーツなど甘みのあるものを入れるのもまた良い。
何より特徴的なのは、外観の三角帽子のような鍋のキャッチーさと、蓋を開けた時の野菜の並べ方の美しさ、そして野菜から滲み出た水分とオリーブオイル、肉の油が混ざり合ったスープに、ホブズを浸して食べる時の多幸感だと思う。街では三角帽子のタジン鍋だけど、アディルと作る時は平たい蓋のタジンを使ってオーブンで焼くことが多い。火にかけて作る時は少しずつ具材を足したり、ずっと近くにいなければならないのだけど、オーブンなら放って置けるので楽だ。
モロッコといえばクスクスも有名な料理だけれど、ここでは一度しか食べたことがない。伝統的には、休息日の金曜日はクスクスをたくさん作って大きな皿に盛り、大勢で皿をつつきながら囲んで食べるのだそうだ。マラケシュの市街でも金曜日は各家庭でクスクスを作り、貧しい人々に分け与えると聞いたことがある。
最近のモロッコは少し冷え込んできた。昼間は25℃くらいなのだけど、山と砂漠どちらも近く、空気は乾燥しているので、日なたと日陰の温度差が大きく、また夜はぐっと冷える。ミントは身体を冷やすものだけど、冬の飲み物はどうするの、と聞いたら、冬はタイムを使ったチャイにすると教えてくれた。ローズマリーと乾燥させたタイムをグラスに入れて、お湯を注いで飲む。一般的なのかは分からない。
ここにいると忘れそうになるけれども、もう12月。年の瀬の日本の独特の雰囲気や、冬を進めていく豊島の小麦色の地面に柔らかい光が差すのを思い浮かべると、たまらなく懐かしくなることもある。こないだ、12月1日のモロッコの光は、気温は全然違くても光の柔らかさがそれに近くて、遠くに来たけれど同じ季節を生きているのだと思いました。










