📍旅路
モロッコからベルギーのブリュッセルに飛び、カミーノで出会った友人宅に2泊。バスでブリュッセルからフランスのパリに移動して、パリの友人宅にゆっくり10日間滞在していました。
ブリュッセルからパリというのは、なんと電車では1時間半の距離なのだそうだ。思ったより近くて驚いた。
🇪🇺西ヨーロッパの暮らしと言語のアイデンティティ
ヨーロピアンたちの冬嫌いはすさまじい。寒くて暗くて雨ばかりの国にずっと居なければならないのが嫌で仕方ないみたいだ。実際、日光不足の心身への影響は深刻で、冬は日常的にビタミンDのサプリを摂る人も多い。
でも行ってみたら、ベルギーではたまたま雪を被った街が見られ、パリでも冬の柔らかい光が美しかった。一方、久々のヨーロッパで何もかもがパッキングされていることに動揺した。モロッコの自然のものや形に近い暮らしから、一気に遠くなってしまった。
ベルギーは小さな国なので、電車で首都ブリュッセルから周辺の大きな街までさくっと移動できてしまう。国土は岩手と秋田を出したくらいだったはず。感覚的には東京と京都と福岡と青森が、全部岩手と秋田の中にあるような感じかもしれない。特色あるいい街がとても近い距離にある。
公用語はオランダ語、フランス語。バイリンガルやトリリンガルも多い。英語もかなり通じる。ちなみに友人に敬意を表して、ベルギーにおけるオランダ語はオランダ語(Dutch)でなくフレミッシュ(Flemish)と呼んでおく。言葉は同じなのだけど、友人が説明する時はいつもFlemishと表現していた。フランダース地方の言葉、の意味。オランダ語とは少しアクセントが違うらしい。
ベルギー、特にブリュッセルはとてもインターナショナルで、フランス、オランダ、ドイツから沢山人が来て住んでるそう。フランスのマルセイユで働く人がベルギーに住んで通勤したりもしているらしい。
アフリカ系の移民や2世も多い。ベルギーが植民地支配していたコンゴを中心に、モロッコなど各地から来て住んでいる人がいる。公用語ではないがアラビア語話者はとても多いそうだ。アフリカはヨーロッパに居るととても近い存在。ヨーロッパの植民地政策の名残で、特に言語が残る国から、多くの移民が来ている。アフリカのストリートフードも日常に馴染んでいるし、フランスではアラビア語由来の言葉もよく使われる。
話者の多い二つの公用語(オランダ語とドイツ語も結構近い)と、国内はもちろん国外もEU内で影響力の強い国々と隣接する地理的条件から、人の移動が多い国、それがベルギーの一つの特徴なのだろう。
内政としては、なんとベルギー全体の統括政府のほかにフランス語サイド・フランダース語サイドの政府がそれぞれにあり、別のルールを持ってると聞いた。言語で教育機関も分かれ、例えば教育内容や学校の質が違ったりするので問題なのだという。
言語が人や社会のアイデンティティに与える影響は本当に大きい。同じベルギー人なのにフランス語系かフランダース語系かで互いを区分し合っている感じは驚きだった。
一方、いつかヨーロッパのどこかの国がアラビア語を公用語の一つにする日は来るだろうか、と考えたりもする。
そしてパリ。パリは2度目で、前回は9月頭。4ヶ月振りの再訪。
日本での典型的なフランス、パリのイメージといえばヴェルサイユ宮殿に凱旋門、中世からの石造りの建築群にルーブル美術館、お洒落なパリジャン・パリジェンヌ...といったところかと思う。日本のフランスに対するイメージの良さはすごい。それと裏腹に、ヨーロッパ人からの評価がやけに低いのがフランス。排他的でフレンドリーではない国民性というイメージがあるようだ。
私はパリはほとんど友人と一緒に過ごしていて、友人の暮らしの中からパリを見る滞在だった。一般にパリ市内と呼ばれるのは、パリを取り囲む環状線道路の内側の20区からなるエリアを指す。区によって住む人々や雰囲気に特徴があるのだけど、区と区の距離も割と近くて、ギュッとまとまった街、それがパリだと思う。
滞在中は友人とよく歩いた。住んでいたアパルトマンが20区と呼ばれるパリ市内北東部で、そこからセーヌ川や、「いわゆるパリ」っぽいパリ、ルーブルや凱旋門なんかがある中心の方まで、歩くと1時間半くらい。メトロが充実しているので、メトロなら20分くらいでサクッと着く。パリ市内のサイズ感は、京都駅から北区あたりまでと大体同じなんじゃなかろうか。
友人が一緒だったからというのもあるだろうけど、パリで嫌な思いをすることは私はなかった。フランス人はフランス語に誇りがあるから英語を話さない、なんて話も有名だけど、確かに他のEU圏より英語が苦手そうな人は多いものの、話せれば話してくれるのが普通だ。一方、お洒落なパリジャン・パリジェンヌ、なんてフレーズは、もはや皮肉としてしかフランス人には言えない感じがある。
パリの夜のバーは、エリアに関わらず人でいっぱいだ。西欧でいうところのバーは、日本的なバーよりもっと身近で、喫茶店くらいの立ち位置で入るところだ。街の至るところにあって、屋内と屋外にみっちり席があり、チェーン店はとても少ない。あと行かない。パリの人々はこの寒いのに、煙草を吸いたいという理由で外でビールを飲んでいる。友人と一緒に歩いても、沢山歩いたしちょっと休憩するか、みたいな感覚でバーに行く。昼間から気軽にみんな飲んでいる。
バーなので一応お酒の種類は沢山あるけど、メニューはほとんど見たことがない。問答無用で1パイント(500ml)の生ビールを一杯。そこそこ安くて3.5€くらい。フランス人は乾杯する時は必ず目を合わせなければいけないというルールがある。夏は日陰の涼しいテラスで、冬は沢山着込んでビールを飲んで、話が弾んだならもう一杯。そんな感じでお喋りしている人がたくさんいる。トランプやらカードゲームやらしながら飲んでる若い人もいる。私は建築より凱旋門より、そんなふうにいつも友達と集まって飲んで笑っている人が沢山いるパリの光景が好きだ。
フランスの労働規約では、労働時間が週35時間(40時間かな?)を超過する時間分は、残業代を貰うか、別日に早く切り上げたり、まとまったら有給として休みが作るかで選べる。が、給料にするより休みにする方が一般的だし、雇用側もお金を払うより休ませたいという考え方らしい。
そういう理由もあってか、私の観測範囲では友達や家族との時間を長く取っている人が多かった。友人と暇だねって言い合えるくらいの時間がなければ、飲みに行ってカードゲームなんかしないだろうなと思ったりもする。このくらいの暮らしがしたい、私も日本の友達と明るいうちからいつだって会いたい。
ヨーロッパは今回の旅ではあまり満足に回れなかった国が多いので、ワーホリのビザ取って近いうちに行きたいなと思っている。
そんなフランスを旅立ち、いくつかのトランジットを経て日本に向かっていく道のりの間から書いています。配信する頃には日本にいます。
メルマガの今後は考え中ですが、少なくとも『ユーラシア旅の衣食住』としては、あと1回更新する予定です。では、また。